外反母趾とは、何らかの原因によって足の形が正しい状態にならなくなった状態を指します。遺伝的な要素がかかわる場合もありますが、生活習慣から発症するケースが多いです。
通常であれば、私たちの足は5本の指がそれぞれまっすぐに伸びていますが、親指付近の「母趾」がちょうど「く」の字のように曲がっている状態が外反母趾です。見た目の変化はもちろん、靴を履くときや歩くときに耐えがたい痛みが生じるようになります。
外反母趾は、一昔前までは欧米人に起こりがちな症状として捉えられていましたが、現在では日本での発症率も上がってきています。
外反母趾は、日本の中高年の女性における発症率が高まっていて、足の悩みでもっとも多いものとしてあげられるほどになっています。長い間ハイヒールを履いてきた女性たちは、数十年の時間を経てそのデメリットを実感するようになっているのです。
外反母趾の特徴に、「男性よりも女性における発症率のほうが高い」というものがあります。実際に外反母趾になっている方の男女比を考えると、男性:女性で9:1となっているためです。ハイヒールを履く習慣や骨格の強度、ホルモンバランスなどが主な原因だと考えられています。
親指が変形してこぶ状になり、日常生活に支障が出るほどの症状があらわれる外反母趾。突然深刻な状態での変形があらわれるのではなく、一度発症してから徐々に症状が進んでいきます。
外反母趾の段階には「初期」「中期」「末期」があり、それぞれに応じて痛みや不便さが変わります。
足のアーチが崩れてしまい、足の裏、かかと、指の付け根に痛みを感じます。「外反母趾予備軍」とも呼ばれる状態です。
この状態では、土踏まずがない「偏平足」、前足の幅が広くなってしまう「開帳足」などが関連してきます。
親指が曲がり始め、足の幅へのダメージが大きくなる時期です。親指の付け根にこぶができ、靴を履いて歩くと強い痛みを感じます。外反母趾の状態としては軽度に分類されるものの、生活で大いに不便な思いをすることになります。
親指と人差し指が重なった状態で、親指の関節にまでダメージがもたらされ、ほとんど脱臼した形になります。靴を履かなくても強い痛みが走るため、外出時でなくとも歩くのに苦労する、という深刻な症状があらわれます。
足の形が崩れた状態を指す外反母趾について、もう少し詳しく見ていきましょう。
外反母趾は、足の親指が小指側に「外反する」、つまり曲がる状態のことを意味しますが、同様に第一中足骨が内側に向かって広がる状態、「内反」もあらわれます。外反と内反が同時に起こることで、症状が進んでいくのです。
外反母趾になると親指が変形し、歩くときに靴の中で痛みを感じるようになります。親指が「く」の字に曲がると靴によって圧迫され、痛みだけでなくしびれを感じるようにもなります。また、親指で地面を蹴り返すこともできないためにほかの指を使わなければならず、結果的に足のバランスが崩れてしまいます。
さらに、外反母趾について注しておきたい点は、症状が進行するごとに日常生活への悪影響が大きくなることです。足指とアーチが不自然な状態にあれば、当然筋肉のバランスが悪くなるためです。これにより、長時間歩けなくなったりすぐに疲れやすくなったりし、日々の移動やスポーツ、家事や育児が難しくなっていきます。
それだけでなく、脱臼や巻き爪などの症状も起こります。こうして考えると、足の症状は私たちが思う以上に深刻な状態につながり、いろいろなシーンでの悩みを増やしていくことがわかります。
外反母趾には「仮骨性外反母趾」「靭帯製外反母趾」「混合性外反母趾」「ハンマートゥ性外反母趾」「病変性外反母趾」があり、タイプによって原因と症状が変わります。
親指の付け根にある骨が変形するタイプの外反母趾です。骨が出っ張って不自然な大きさになり、曲がっているように見えることが特徴で、ほかのタイプのように親指が曲がることはありません。
仮骨性外反母趾の原因は、主に歩き方だと言われています。親指の付け根を地面に強く当てて歩くと、このタイプの外反母趾が起こりやすくなります。ハイヒールを履く習慣がなくても発症しやすい対応です。
外反母趾のなかでももっとも発症例が高い対応で、足指の付け根のアーチが崩れることによって起こります。アーチが伸びたり緩んだりして親指が小指に向かって外反するケース、反対に小指が親指に内反するケースがあります。
最初のうちは痛みを感じますが、症状の進行につれて痛みが引いていき、最終的には脱臼状態になります。状態の悪化を防ぐためにも早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが必要です。
「仮骨性外反母趾」「靭帯製外反母趾」が同時に起こるタイプの外反母趾です。親指の付け根にある骨が過剰に大きくなり、また足のアーチが伸びたり緩んだりすることによって症状があらわれます。一般的に、30~40代以上の女性における発症率が高いです。
また、2つの外反母趾がある程度進行した段階で起こりやすいとも考えられています。
別名「浮き指」「指上げ足」とも呼ばれるタイプの外反母趾で、足指が縮こまったりそり過ぎたりしている状態がよく見られます。
合わない靴を履き続けることが主な原因となりえますが、スポーツ障害の症状としてあらわれるケースもあります。特に小学校から高校生でスポーツをされる方に多い外反母趾となるため、心当たりのある方はスポーツ中の足の使い方に気を配り、またわずかな異変も見逃さずに適切な治療を受けることが大事です。
関節の病気によって発症するタイプです。普段の歩き方や靴によって引き起こされるのではなく、病気を原因としているところがほかの外反母趾と異なる点です。リウマチやヘハーデン結節などの病気との関連性が指摘されています。
足の関節が変形すると徐々に外反母趾に近い症状があらわれることが、「病変性外反母趾」のメカニズムです。ある程度年を重ねた方に起こりやすいタイプの外反母趾でもあります。
親指の付け根はまっすぐに伸び、小指も曲がることなくすっと伸びています。
関節の病気が関係していない限り、外反母趾は日常生活での足の使い方が原因で起こります。それぞれの原因に心当たりがないか、見ていきましょう。
外反母趾の原因には、「歩き方」「会わない靴」「運動不足」が有力だと考えられています。また、足の形が外反母趾の発症率に関係するケースもあります。
外反母趾の原因として考えられやすいものの一つです。足指を使わずに地面にぺたぺた足の裏をつけたようにして歩くと、足指の筋肉が弱まり、外反母趾になりやすいと言われています。足指を十分に動かせない靴を履いていることから起こるケースも多く、歩き方と同時に靴の選び方も原因となります。ハイヒールや革靴など、本来の足の形と外れた靴を履いていなくても、合わない靴を履くだけで外反母趾になってしまうのです。
そのため、外反母趾を防ぐには歩き方の見直しはもちろんですが、自分に合った靴を見つけることが先決と言えるでしょう。いくら歩き方を改善しても靴が合わなければ、せっかくの努力が半減してしまうからです。
つま先が細いパンプス、ハイヒール、革靴は、私たちの足の形に合わないものが多いです。長時間履いて過ごすことで足のアーチが崩れ、外反母趾の発症と症状進行につながります。
ハイヒールや革靴だけでなく、サンダルでも足のアーチに悪影響を与える可能性があります。
日ごろから運動をしていないと、足指の筋肉が衰え、外反母趾を発症するリスクが高まってしまいます。ウォーキングをはじめとする運動の習慣をつけるのはもちろんですが、足の形にぴったりと合う靴を選ぶことも、運動不足による外反母趾を防ぐための大切なポイントです。
足指の中で親指がもっとも長い「エジプト型」、人差し指が長い「ギリシア型」、親指と人差し指の長さが同じである「スクエア型」の足は、外反母趾になったり足のトラブルを抱えたりしやすいと言われています。日本人の8割はエジプト型の足であることから、外反母趾を発症する確率が比較的高いとされています。
以上の原因に加え、足のアーチも無視できないポイントです。アーチとは足の骨の連なりのことで、私たちの足には土踏まずと足の縦・横にアーチがあります。両方がバランスをとってこそ健康な状態を維持できるのですが、例えば「偏平足」で足が平らになったり、「開張足」で足指の幅が広がってまっすぐな状態になったりすると、その分外反母趾になるリスクが高まってしまいます。
足のアーチとは本来、文字通り弓なりの曲線で成り立っているものです。足を地面につけた状態と5本の足指が崩れていると、足のアーチが崩れている可能性が高いです。筋力低下や肥満が主な原因となりえますので、心当たりがある方は要注意です。
外反母趾は進行性が強く、自然に症状が改善されるものではありません。治療を先延ばしにしていると症状が進むだけなので、足の異変に気付いた時点で対処法を考える必要があります。
外反母趾の治療は、病院か整骨院で受けることができます。
病院で外反母趾の治療を受けるなら、整形外科を受診しましょう。整形外科には足の症状を得意とする医師が在籍しているので、外反母趾の治療を受けるには適しています。また、外反母趾の治療を得意とする病院を、インターネット上で調べることも可能です。
整形外科ではレントゲン検査をはじめとする画像検査で足の状態を確認し、症状に合わせた治療がおこなわれます。日本整形外科学会による診療ガイドラインを参照に、足指の曲がり方から症状の程度を判断し、適切な治療法を進めていく流れになります。
外反母趾は骨の変形を原因とするため、完全に治すことは難しいですが、軽症であれば痛みと変形を最小限に抑えられます。あまりにも症状が進行している場合には手術療法が選択されるケースが一般的です。
外反母趾の治療法として保存療法と手術療法がありますが、保存療法は整形外科だけでなく整骨院で受けることもできます。柔道整復師の国家資格者が治療を担当します。ちなみに整骨院と接骨院は名前こそ違いますが治療内容は同じとなりますので、接骨院で外反母趾の治療を受けることももちろん可能です。
テーピングによる固定、インソールやサポーターによる骨格矯正、痛みの緩和にアプローチするマッサージや温熱療法など、治療法は整骨院・接骨院によって変わります。外反母趾は足の痛みだけでなく腰痛や肩こり、頭痛を併発するリスクが高いことを踏まえ、ほかの不調に関しての治療も、相談すれば対応してくれる場所が多いです。
外反母趾の治療の保険適用は、どこで治療を受けるかで変わります。
病院での治療では保険適用がされるケースがほとんどです。骨格矯正に使う装具やインソールなどは全額負担となりますが、場合によってはのちに保険請求ができるので、必要であれば相談してみましょう。
整骨院・接骨院で治療を受ける場合、場所によっては保険が適用されないケースもあります。骨折、脱臼、捻挫、打撲など、保険適用される症状が急性的なものに限られ、外反母趾はこれらに含まれないためです。
しかし、整骨院・接骨院ではほかの症状も総合的に治療してくれる点、病院とは違った通いやすい雰囲気を前面に打ち出している点もあることから、自費診療でも快適に治療を受けられる環境を希望するならぜひ問い合わせてみるといいでしょう。
外反母趾の治療法には、手術療法と通院療法(保存療法)があり、整形外科では両方、整骨院・接骨院では通院療法がおこなわれています。
外反母趾による足の変形は確かにリスクが高いものですが、「痛みのあまり靴が履けなくなる」「膝や腰にも痛みを感じる」「慢性的な肩こり、腰痛もちになる」などの健康被害も避けられなくなるため、私たちが想像する以上に多数のデメリットが生じることがわかります。
もちろん、整形外科や整骨院・接骨院などで症状緩和を試みることもできますが、なるべくご自分でも予防していくことが大事です。そこで、歩き方の改善とセルフマッサージの方法をご紹介します。
外反母趾の原因としてもっともよく考えられるものの一つが歩き方です。体のバランスが整っていない状態で歩いてしまうとそれだけ足に負担がかかり、変形につながるためです。歩くときには足と体のバランスを意識し、正しい歩き方を続けていきましょう。
例えば新しい靴を履くとき、まだ足に慣れないために不自然に感じることがあります。そのまま長時間履き続けると足に負担をかけるため、慣れるまでは短時間にとどめ、だんだんと足に慣らしていくことをおすすめします。
また、私たちは朝と夜で足の大きさが異なる傾向にありますので、時間帯に合わせた靴の履き方にも注意しましょう。朝よりも足が大きくなる夕方以降には、ゆったりと履ける靴で過ごすのが理想です。
次に、外反母趾の予防と症状の緩和に役立つマッサージもおすすめです。
手の親指と人差し指で爪をつまむようにつかみ、左右に揺らします。細かく揺らすのがポイントです。すべての足の爪をマッサージしましょう。
手の親指、人差し指、中指を使い、それぞれの足指を優しくもみほぐします。爪のマッサージと同様、揺らすように触れましょう。
指と指の間にある部分「水かき」を、手の親指と人差し指でもみほぐします。「指と指を引き離すように」マッサージすることを意識しましょう。
足の裏に手の指を移動させ、手の親指の腹を使って指の付け根をそれぞれマッサージします。このとき片方の手で足を抑えると、マッサージしやすくなります。
普段の生活環境が大きく関連する外反母趾。日本でも発症率が高まってきている以上、歩き方や靴の選び方、運動などに気を配り、予防に力を注ぐ必要があります。
また、少しでも足の違和感が気になるのであれば、できるだけ早くに病院で検査を受けることをおすすめします。外反母趾は適切な対応をせずに自然治癒する可能性が極めて低く、仮に手術をしても足に負担が残るケースが多いためです。軽症のうちから適切な治療を受け、日常生活から症状の進行を予防していくことが、何よりも大事だと言えるでしょう。
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